戦後70年(2015年)、町立久万美術館では、戦後の愛媛を代表する洋画家の一人・岡本鐵四郎(1915-1998)が戦中、戦地で描いた水彩画、スケッチなど約280点を初公開します。
岡本は中国の徐州、北京などで、日本陸軍の宣伝活動に従事しました。その間、現地の人たちの暮らし、身近な街角の風景などを精力的に描いた水彩画や鉛筆スケッチを残しています。兵士の姿や廃墟となった町並みなどが描かれているものの、スケッチの多くは、いわゆる戦争画にはほど遠く、国威を発揚するような要素もなければ、さほどの緊迫感もありません。戦争の悲惨さ、暗さ、辛さなどを想起させる表現も見当たりません。むしろ、闊達な筆致の中に明るい情感さえ漂っています。
現代は、経済も文化も世界規模で均質化するとともに、分裂や分断、激しい衝突などが起きている時代。シベリア抑留などで10年以上も長い「戦争」を体験した岡本は、「戦中・戦地」をどのように生き抜いたのでしょう。いまを生きる私たちは、これらのスケッチのリアリティーをどう捉えればいいのでしょうか。この展覧会を戦争について考える機会にしたいと企画しました。