私たちが普段身に着けている洋服。明治時代以降、徐々に日本の生活に浸透していったこの西洋の服は、どのような変遷を経て現在のかたちに至ったのか。それは、ファッション・デザインを志している人でなくとも、興味深いのではないでしょうか。
ファッション・デザインの教育者として、服飾の歴史の重要性と魅力に強く惹かれた人物に、石山彰(1918-2011)がいます。石山氏は大学で長く教鞭をとり研究を続けるとともに、服飾史に関連する書籍・資料を蒐集していきました。
本展覧会ではこの貴重なコレクションのなかから、16世紀以降の服飾や風俗を伝える書籍と、18世紀末以降の最新流行を伝える雑誌(ファッション・ブック)や版画(ファッション・プレート)、遠い土地への憧れと結びついた民族服の研究書と20世紀初頭に登場した新しいスタイルのイラストレーション、さらに日本の洋装化の始まりを描いた錦絵を、神戸ファッション美術館が所蔵する同時代の衣装や版画と合わせてご紹介します。
移ろいゆく時代の瞬間の証言者であるこれらの歴史的資料を通覧することで、太古より続いてきた美を巡る人類の営み、そして現代のファッションへと想いをはせることになるでしょう。