若林奮(わかばやし いさむ/1936-2003)は20世紀後半の日本を代表する彫刻家です。幼い頃に戦争を体験し、戦後の高度経済成長期に作家となった若林は、社会が大きく移り変わるなか、時間の推移や運動によって変化する環境のあり方を自身との関係性において彫刻として造形し、その行いを通して世界の本質を考察しつづけました。その作品の多くは、主題はもとより、形状や材質、技法においても従来の彫刻にはなかったものとなっています。
「飛葉と振動」は、最晩年の彫刻作品につけられた名前です。このふたつの言葉を手がかりとして、国内5会場を巡回する本展では、彫刻のほか、素描や模型、資料類を交えて、最も重要な主題である「庭」をめぐる作品から作家の生涯にわたる創作の歩みを紹介します。
芸術が思索の装置としてあり、哲学として存在していることを再認識させる若林の造形は、この世にある人間存在がはかなくもろいものであることを知らしめ、謙虚に世界と向き合うことへと私たちを導きます。
名古屋市美術館での若林奮展の開催は、1997年以来およそ20年ぶりとなります。作家亡きあとに開催される本展は、若林奮という無二の作家の魅力にあらためて触れていただく機会となるものです。