19世紀フランスの画家オノレ・ドーミエ(1808-1879)のコレクションは諷刺画で知られる伊丹市立美術館において、大きな柱のひとつです。
ドーミエは、近代化とともに新しい都市へと様変わりするパリの相貌を活写し、ドガやロートレックなど後進の画家に影響を与えました。
洋梨姿の国王に、戯画化された政治家の面々、ロベール・マケールやラタポワールといった架空のキャラクター、あるいはパリの風俗や市井の人々の喜怒哀楽など、まるで芝居のワンシーンやスナップ写真のように、ときに辛辣で、ときに愛すべき日常劇がそこから立ち現れてきます。
こうしたドーミエの魅力を再考する試みとして、2017年1月に当館で大規模な個展が予定されているしりあがり寿(1958- )を招き、当館のドーミエ・コレクションに着想を得た作品を制作してもらいます。独特のユーモアで現代の世相を鋭く表現する希代の漫画家・しりあがり寿。対象の特徴を瞬時にとらえる観察眼と躍動感あふれる描写力では、ドーミエに勝るとも劣らない才をもつ彼の目にドーミエ作品はどのように映るでしょうか。
本展では、ドーミエの珠玉の作品群としりあがり流諷刺画を併せてご覧いただくことで、両者の時代を超えた出会いによる化学変化をお楽しみいただきます。