具体的な形象から離れて抽象的な表現を追い求め続けた清川泰次(1919-2000)。その創作活動は1980年代に入ると、絵画だけにととまらず、立体作品や生活デザイン全般へと拡がっていきました。
シャープな輝きの鏡面仕上げのステンレス素材で制作された清川の立体作品は、真っ白に塗られたカンヴァスの上に引かれた線が、3次元の空間へと画面から飛び出したかのようにも見えます。立体となった線は、画面という制約を離れ、空間の中を自由に動くことができます。
一方、清川の絵画に見られるリズミカルな線と色によるシンプルな構成は、ハンカチをはじめ、カーテンやカーペットといったインテリアファブリックまで、様々なテキスタイルデザインに応用されました。また、清川は、グラスやカップ&ソーサーなどの食器のデザインも手がけました。こうした工業製品として量産されるテーブルウェアのほか、なかには、益子や、有田などの現地の窯へ赴き、自ら絵付けをして制作したものもあります。これらの制作について清川は次のように語っています。「陶芸の愉しみは、焼き上って15%程小さくなって窯から出て来るものが、思い通りの釉薬の色に仕上がって、その器の中に斬新なバランスの中におさまっているかを、わくわくする思いで見る時であろう。」 陶芸のもつスリリングな特性は、清川に絵画表現では体験できない愉しみをもたらしました。
本展は、暮らしを豊かにするために、日常生活のあらゆる場面に自らの美意識を反映させ、多岐にわたる創作活動を展開した清川の1980年代以降の作品を中心にご紹介します。絵画や立体作品約15点に加え、清川がプロデュースしたオリジナルデザインによる各種グッズや、自ら絵付けをした陶磁器などもご紹介します。