大阪で活躍した上島鳳山(うえしま ほうざん)(1875-1920)は、明治8(1875)年、現在の岡山県笠岡市に生まれ、木村貫山、西山完瑛、渡辺祥益に師事して独特の雰囲気を漂わせた女性像を多く描きました。明治42(1909)年の第3回文展に《緑陰美人遊興図》が落選したという記録が残る他は、展覧会への出品よりもむしろ後援者の求めに応じて描くことが多く、住友家主催の園遊会などで席上揮毫を行ったと言われています。
こうした、大阪における後援者との密接な関係は、鳳山だけでなく他の画家たちにも見られます。彼らの作品は公になりにくく、経歴にも辿れない部分が多いため、名前が知られにくい傾向にあります。しかし、各家庭において季節やしつらえに合うように描かれたこれらの絵画は、表具にも配慮がなされ、展覧会出品作とは異なる魅力を持っています。
平成27(2015)年は上島鳳山が生まれて140年目にあたります。このたびの展覧会では、鳳山の未公開作品をご覧いただくとともに、同時代に活躍した画家たちを紹介して、近代大阪における絵画制作の現場について考えてみたいと思います。あわせて、画家の個性だけでなく享受する者の感性が反映された作品を通して、日常で美術を楽しむことについて見直すことができましたら幸いです。