土門拳は戦後の日本を代表する写真家の一人です。その粘り強くとことん撮る姿勢は「写真の鬼」と呼ばれるほどでした。報道写真家として、貧しくも逞しく生きる人々など、ありのままの姿を飾ることなく写し出した土門は、戦後のリアリズム写真を確立した写真界の巨匠です。その後、ワイフワークとして40年の歳月をかけ100か所以上の寺院に出向いて撮影した『古寺巡礼』(1963-75年発表)は、代表作として知られています。本展は、東京工芸大学 写大ギャラリーの開設40周年を記念して、中核コレクションのひとつである土門拳の『古寺巡礼』を中心にご覧いただきます。
日本初の写真教育機関として大正12(1923)年に創立された小西写真専門学校を前身としている東京工芸大学は、日本を代表する写真家や写真研究者を数多く輩出しています。1975年に第一線で活躍する細江英公が教授として就任すると、写真芸術に触れられる先駆的な場として、国内外の優れたオリジナルプリントを収集・展示する「写大ギャラリー」が開設されました。
細江の根気強い要望に応えた土門の厚意により、写真集『古寺巡礼』と『自選作品集』収録作品から、写大ギャラリーのために1,275点がプリントされ納められました。今回は、その中から約150点を厳選してご紹介いたします。
日本の美を追求した力強い表現世界を心ゆくまでご堪能下さい。