栗田咲子さんの作品にしばしば登場するひと、それが柴垣美恵さんだということがわかるまでには時間がかかりました。美崎慶一さんの作品にも栗田さんや柴垣さんが描かれたモノがあります。そして柴垣さんの作品にも中川雅文さんや美崎さん夫婦がユーモラスに登場します。
それぞれの一枚の「絵」に引き込まれ、興味深く観ていた作家さん同士が実は深く繋がっているということをはっきりと認識したのはごく最近のような気がします。
彼らはスケッチ旅行に出かける仲間でもあって。
天王寺動物園に出かけながら、動物ではなくパラソルの下、プラスチックの椅子に座る友人を100号の絵にしてしまう関係。なんかとてもうらやましい。
彼らには中の島美術学院で芸大受験生の指導を一緒にしていた時期があります。さらに遡ると彼らはまさに芸大受験のために同校で学んでいたのです。
彼らが描く世界を、僕たちはとても気に入っています。
全く違う表現の奥で共有されている描く姿勢とは何だろう? 伝わってくる魅力についてはうまく言葉にはできませんが、今回の展覧会を観ていただくことで腑に落ちる何かを共有していただくことができるかもしれません。
その他にも中の島美術学院という「場」を通り抜けて今も制作し続け、琴線に触れる作品を発表している人が何人もいます。今回は、行千草さん、成山亜衣さんにも参加していただき展覧会を開きます。
「演画・中の島ブルース」という企画ワードは「私、前川清が好きです。」と栗田咲子さんが言ったところから来ているのですが、昭和演歌の叙情的で艶っぽいひたむきな恋熱を歌う前川清さんの歌を思い浮かべてしまうと展覧会のイメージとはちょっと差異が生まれるかもしれません。でも、原点としての「中の島」を示唆する言葉として、ショルダーに掲げておきたいと思います。 寺久保吉完