当館では、収蔵しているさまざまな資料を紹介する収蔵品展を行っていますが、今回は、市民の皆様から寄贈された「講中の共有道具」をテーマとしました。相模原市域やその周辺地域の古くからの集落には、講中と呼ばれる家々の組織があります。講中は、例えば、何か事があった際にお互いに助け合ったり、道普請などの作業に共同で当る、念仏講等の信仰的な行事を行うなど、かつての生活の中で大きな役割を果たしていた社会的なまとまりと言えます。
講中の持っていた重要な機能の一つとして、多くの道具を共同で所有し、保管していたことがあります。これらの道具は、祝儀・不祝儀などの「ハレの日」に用いる大量の食器類を中心に、婚礼用具や葬式に使うもの、信仰用具など多岐に渡っており、これ以外にも各講中によっていろいろなものがありました。そして、講中に入っている家では、必要に応じてこれらの道具を借り出して使うことができるようになっており、使用の際には講中ごとに一定の決め事があって、無料で使うことができたり、いくらかの使用料を支払う場合などもありました。
現在では、集落の中での講中の役割も小さくなり、さらに、冠婚葬祭などを自宅で行うことの減少に伴って、各講中が保管してきた食器を中心とした道具類が使われることもほとんど見られなくなってきました。
今回の収蔵品展では、講中の解散などによって博物館に寄贈されたさまざまな道具類を中心に展示します。また、それらの共有道具としての形成時期や個人の家が保管してきた道具との関係、神奈川県内の赤飯の贈答用具の分布など、いくつかの関連する内容にも触れながら、講中の共有道具の持つ意味についても考えてみたいと思います。