厳しくも豊かな恵みをもたらす東北の大地。自然に従い、その恵みを受けてくらしてきた東北の人々は、生活の中から独特の文化を育んできました。その文化は決して孤立したものではなく、都などとの交流と、風土によって磨かれた感性が融合して形作られたものといえるでしょう。東北の美は原始的であるとともに革新的でもあり、重々しいようでありながら明るく鮮やかな一面もあり、一言では言い尽くせない多様性にみちています。
この展覧会では、〈信仰〉〈美術〉〈くらし〉の三つの視点から、東北の人々の美意識が結実した作品をみていきます。まず縄文時代の土器や土偶、古墳時代の埴輪などの出土品。次に古代から中世にかけて花開いた仏像や曼荼羅などの仏教美術。そして東北の地に生まれた画家や彫刻家たちの際だって個性的な作品。さらにはさまざまな階層職業の人々が身につけた衣裳など。東北の四季を彩る祭の道具立てもあります。幅広い分野から選ばれた約140点の出品作品により、東北の美とは何かを探ろうとする展覧会です。
国宝12点、重要文化財23点をはじめ、名品が数多く出品されます。ふだんは各地に点在する文化財を、一度に見ることができる希有の機会でもあります。名品の放つ美が、東北とは、東北の美とは何かを、教えてくれることでしょう。