能登国七尾出身の長谷川等伯(1539~1610)は、20歳代には緻密な仏画を描く絵仏師として活躍、30歳代中頃に正式に京都へ移住したと考えられています。上洛後は千利休や高僧、武将たちと親交し、長谷川派の長として一派を率い、画壇の実力者・狩野派に対抗していきました。豊臣秀吉好みの金碧障屏画も描いて着色画家としての実力を発揮する一方、中国の禅僧画家・牧谿の水墨画などに学び、墨の世界に美の境地を求めていきます。特に50歳代頃からは、藁筆などを自由自在に使い分け、国宝「松林図屏風」などの名作を生み出しました。
当館は毎年「長谷川等伯シリーズ展」を開催していますが、本展は特別企画として開催するもので、修復によってよみがえった等伯の水墨画屏風2点を、一般に本邦初公開いたします。この2点は、新発見後に修復され、所蔵先であります京都造形芸術大学の「ふさわしい場所へつなげたい」との思いに応え、七尾市が同大学よりお譲りいただいたものです。郷里七尾で初公開できることは大変意義深く、同大学や関係各位に御礼申し上げますと共に、多くの方々にご覧いただけるよう願っております。その他、重要文化財の水墨画4点や「複製松林図屏風」を含む12点を紹介します。会期中には、これを記念して修復報告や座談会、水墨画のワークショップも開催します。是非この初公開の機会をお楽しみください。