朝顔がもっているたくさんの突然変異の遺伝子を見つけ出し,変化朝顔というおびただしい数の系統群をつくりあげた江戸時代後期の朝顔の園芸文化は世界でも特異であり,その後の明治・大正・昭和の文化にも大きな影響を与えながら受け継がれてきました。中世以降,日本は世界の園芸のセンターの一つとなりましたが,朝顔はその中核的な植物でもありました。したがって,その実体を浮き彫りにすることは,生活文化の特質や技術史を理解することになります。
国立歴史民俗博物館は,1999年以降,辛うじて維持されてきた江戸時代以降の朝顔の系統を収集し,毎年,くらしの植物苑特別企画として「伝統の朝顔」の展示を開催してきました。今,いくつかの遺伝学研究室を除くと,国立歴史民俗博物館は系統を収集・維持していく唯一の博物館となっており,上記のような日本文化とその歴史の理解を促すという意味で,継続的な展示が求められています。
今年度は,これまでの収集・維持系統を総括し,江戸時代後期から今日までのブームの中心になった系統群の歴史的な流れに重点を置いて,江戸時代後期以降の正木系統と出物系統,明治・大正以降の正木の1系統群である大輪朝顔を展示します。また,同時代の西欧での流れを対比するために,主としてヨーロッパで栽培されてきたアサガオ近縁種もあわせて展示します。