浮世絵版画は江戸時代の庶民にとって身近な情報メディアでした。主に描かれたのは、人気の歌舞伎役者や美しい女性の姿、話題の観光スポットなどですが、もちろんそれだけではありません。浮世絵の内容は、実に多岐にわたり、現代の我々を楽しませてくれています。
今回紹介するのは、ただ見て楽しいだけではなく、歴史上の偉人とされる人物の行いやいわゆる「二十四孝」など、とてもためになる“ありがたい”浮世絵版画です。当時は、これらの絵から教訓を学び、自らを振り返って倫理観を養いました。
ひるがえって現代では、クローン人間、化学兵器、犯罪の質の変化など、科学や社会の先走りに対して、それに応じた倫理の確立が求められています。倫理観も時代の流れによって変わるものですが、先人の例から学ぶことも少なくありません。
本展では、歌川国芳や月岡芳年などの浮世絵版画約20点を通して、江戸時代の倫理を振り返ります。