入江一子 (いりえ かずこ) は、シルクロードをテーマに創作活動を行っている洋画家です。
山口県出身の入江は、1916(大正5)年に生まれ、幼少期を韓国・大邱(テグ)で過ごしました。小学校や女学校の頃には、作品が天皇家へ奉納されたり、フランス総領事に買上げられたりするなど、絵の才能を早くから発揮します。女子美術専門学校(現 女子美術大学)へ進学の後、洋画家・林武 (はやし たけし) と出会い、以後生涯師事しました。1947(昭和22)年には女流画家協会へ創立会員として参加し、1957(昭和32)年には独立美術協会の会員に推挙され、今日に至るまでそれぞれの団体で作品を出品し続けています。
戦前、大陸で見た夕日の沈む雄大な風景に大きな感動を覚え、53歳となった1969(昭和44)年からシルクロードを旅行するようになると、当地の色彩鮮やかな風景やその土地で暮らす人々の文化に強く魅了されました。以来、30余ヶ国にわたってシルクロードの国々を訪れ、40年以上ライフワークとして描いてきました。今年で99歳となりましたが、今なお尽きることのない創作意欲を原動力に、大作を中心とした制作を行っています。
本展では、画家がシルクロードを旅する中で見てきた雄大な風景や人々の素朴な生活のすがた、また、諸国歴訪以前によく描いた石仏などをモチーフに、その時々で受けた情感を色彩に込めて描き出した作品37点を展示し、画家・入江一子の約80年にわたる画業の歩みを振り返ります。
また、特別出品として、インドの情景に深く感銘を受け、生涯のライフワークとして描き続けた秋野不矩の作品7点を展示します。