「ライフ=ワーク」展では、広島の被爆者たちがその体験をもとに描いた「原爆の絵」(広島平和記念資料館蔵)を出発点に、自身の体験、生活、人生が色濃く反映する13作家の表現をあわせて紹介します。シベリヤ抑留体験をモチーフとした連作で広く知られる香月泰男や宮崎進、原爆により両親を失い、喪失と苦悩を創作活動へと結びつけた殿敷侃、晩年に広島の被爆樹木を多数描いた入野忠芳など、生きること(ライフ)と作品(ワーク)が緊密に結びつく表現を探求します。生死と結びつき、人生に重大な影響を及ぼした出来事やトラウマに向き合うこと、あるいは、日々の生活を写しとること、さらには、それまでの人生を意味づけていくかのような制作行為など、それら「ライフ=ワーク」の有り様は、表現の根源をも照らし出すものといえます。
また、作り手の「生」が結晶化した作品の示すものとは、個人の体験を他者へ伝え、さらには時代的・文化的違いを超えた共有をはかるうえで美術が果たしうる可能性でもあります。