1960年代初め、鉄を直接刻み、溶接する作品で鮮烈なデビューを飾った若林奮(1936-2003)。その後も国内画での発表を重ね、ヴェネツィア・ビエンナーレ代表を2度つとめるなど、戦後日本を代表する彫刻家として活躍しました。
没後13年を経て企画された本展は、その創作活動を振り返るとともに、これまで十分に紹介されてこなかった「庭」をめぐる制作に光をあて、関連する彫刻作品やドローイング、資料や新規撮影の写真と映像によって紹介します。
若林奮は石や木、石膏、鉛、銅、硫黄など、多様な素材を自由につかい、また水彩、素描、版画、小さなオブジェ、本と、さまざまな形式を選択しました。「庭」もまた、大気、水、植物、光や、時間を素材とした彫刻であると見るとき、形式を限定させずに彫刻の可能性を追求した、若林奮の視野の広さを感じることができるのではないでしょうか。
若林奮は、多摩・武蔵野で生まれ育ち、晩年まで生活と制作の基盤をこの地におきました。府中市美術館では特別に、前庭に恒久設置されている《地下のデイジー》の構想画、鉄の大作《DAISY IV》、そして初期の傑作《雨―労働の残念》(武蔵野美術大学 美術館・図書館蔵)等を展示し、自らの立つ土地に注いだ若林奮の思いをたどります。