デザインは「感性の仕事」と思われがちだ。核心においてはもちろんそうだろう。けれども、そこには、当然、意図や戦略といったものがあって、そこは案外ロジカルな領域であったりする。ライゾマティクスがこの展覧会で定量化し、可視化しようとしたのはそこだ。膨大な数のグラフィック作品の「ビッグデータ」を解析することで見えてくるのは「感性」という曖昧なくくりでは語れない、確固たる「技法」だ。しかし、それが見えたからどうした、というのもありうべき反応だ。クリエイティヴを定量化することになんの意味があるのか、と。しかし、早合点してはいけない。ギリギリまで解析しつくした先に、それでもやはり解析しえない何かが残るのであれば、そこに、いよいよ明確に「感性」というものが立ち現れてくる。データ解析の先に解析不能な領域=「死角」を浮かびあがらせること。ライゾマティクスが目論んだのは、そういうことだろう。
若林恵 『WIRED』 日本版 編集長