私たちは、どのようにして私たちを取り巻く世界と出会うのでしょうか。
たとえば、今そこにあるモノは、私が見ていない時にもちゃんとそこに存在するのでしょうか。それとも、私が見ているからこそモノはそこにあり、私抜きではモノは存在しない、つまり私が知覚していなければ私を取り巻く世界も消えてしまうのでしょうか。
反対に、私はそんなに大した存在ではなく、私もまた世界に無数にあるモノの一つに過ぎないのでしょうか。しかしその時、他のモノとはちょっと違う「モノを知覚している私」という存在を一体どう考えればいいのでしょうか。
フランスの哲学者、モーリス・メルロ=ポンティは、「私」だけがあるのでも「モノ」だけがあるのでもない、「私」と「モノ」が出会う、その接触面にだけ、世界は成立するのだと考えました。ちょうど、手袋の布一枚をはさんで内側の「私」と向こう側の「世界」が触れ合うように。メルロ=ポンティの著作は1960-70年代、アーティストに大きな影響を与えました。
この小企画展は、メルロ=ポンティを隠れた案内人に、「リヴァーシブルについて考える」「私が私にさわる」「一点透視法を疑う」などのテーマで、オブジェ、写真、映像、絵画など約30点をご紹介するものです。