フランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドン(1840-1916)は、画歴の前半を木炭画や石版画などの黒の追求に費やし、後半は対照的に夢見るように鮮やかな色彩の世界を展開しました。1880年代後半から1890年にかけて、フランスで象徴主義世代が台頭すると、ルドンの怪奇な図像、独創的な構図や主題の数々は、驚きをもって賞賛されたのです。こうしたユニークな黒の作品を通じて、ルドンはいったい何を追求していったのでしょうか。そしてその追求は後年の色彩の世界にどのように継承され、又は変容していったのでしょうか。
本展では、極めて特異なルドン芸術の本質が眠っている「黒」における画家の探求を木炭を中心に探ります。そして、この探求が色彩の世界でどのように発展し、結実し、あるいは溶解していったのか、この問題をパステル画や油彩画でみていきます。黒と色彩、一人の画家における両者の共存がこれほど問題になる作家はおそらくルドン以外にないでしょう。
この展覧会は、国際的に高く評価されている、岐阜県美術館のルドン・コレクションを構成のかなめとしつつ、ヨーロッパ、アメリカほかのコレクションで、この芸術家の黒と色彩の最良の部分を油彩、パステル、版画約160点でご紹介します。