若林奮(1936-2003)は戦後日本を代表する彫刻家として国内外で高く評価されています。若林の作品は不思議な魅力をもっています。鉄をはじめ木や石膏、硫黄などを素材に大気や水、光といった彫刻にしがたい対象を作品に取り込んでいきました。
それを可能とした概念として「振動」があります。私たちを取り巻く外界はすべて振動をもっており、彫刻は振動を感じ取る手段となりえるという考えのもと《振動尺》という作品がつくられました。若林は振動尺によりさまざまな振動を感じ取っていきました。大気はもとより樹木や犬など動植物の振動も感じ取ろうとしました。人間である若林がいかに自然と息を合わせ共鳴できるか、この思いはやがて庭へと発展します。庭を手がけた以降の若林はさらに自然の深部へと踏み込んでいきました。「飛葉」とは自然の深奥から到来する振動の名とも思われます。
本展では、これまで十分に紹介されてこなかった若林の「庭」をめぐる制作に光をあて、《軽井沢・高輪美術館の庭》、《神慈秀明会神苑 (みその) の庭》、《緑の森の一角獣座》などを中心に、関連する彫刻のほか、水彩・素描さらに関係書籍・資料を紹介します。