1939年東京に生まれた佐々木苑子は、静岡県の手織り紬工房で平織・縞・格子の技術を学んだ後、71年に紬織の作品で伝統工芸新作展に初入選します。その後、曲線で表現する絵絣の技を求めて、鳥取県の弓浜絣と島根県の広瀬絣を学びます。そして、作家にとって尽きせぬ感動の源である、鳥や花、星や月などの身近な自然のモチーフから図柄を創案し、多彩な植物染料で染めた紬糸の繊細華麗な絵絣に表すことに挑みます。従来、木綿糸を藍染めし伝統的な柄を織り出す素朴な味わいを持っていた絵絣を、品格ある芸術性の高い紬織の絵絣へと展開させました。強靱で艶のある絹糸による絵絣や紋織の着物を日本伝統工芸展を中心に発表し続け、その技術と芸術性が高く評価されて1975年第22回日本伝統工芸展で日本工芸会総裁賞、2001年第48回展で東京都知事賞、03年第50回展で日本伝統工芸展第50回展記念賞等、受賞を重ねています。2002年紫綬褒章、05年重要無形文化財「紬織」保持者への認定、09年旭日小綬章を受け、現在も制作・後進の指導・普及活動に活躍しています。
本展は、50年近く重ねられてきた創作の全貌を紹介する初めての機会となります。鳥や植物の姿を絣の文様に浮かび上がらせ、また、時のうつろい、風や光のゆらぎを微妙な色調にこめた着物や帯などの代表作約70点をご紹介いたします。