高麗時代(918~1392)に作られた青磁、高麗青磁は、韓国の美術史上に大きな位置を占め、世界に誇るべき美術品です。1980年代以降、朝鮮半島中西部で窯址の発掘調査が進展する従い、高麗青磁の起源をめぐる研究が大きな転換期を迎えました。そうした新たな研究成果を日本で初めて紹介したのが、2004年に当館で開催された「高麗青磁の誕生展」です。高麗青磁の研究は、文献調査や窯址発掘のみならず、近年では、水中考古学による研究成果が注目を集めています。1976年、朝鮮半島西南部の新安沖で発見された「新安船」の調査はその後の韓国水中考古学のモデルとなり、韓国国立海洋文化財研究所によって水中考古学が目覚ましい発展を遂げました。現在、同研究所によって調査された高麗青磁や、紀年銘が書かれた木簡などの海洋遺物に基づいて、高麗青磁の編年や生産、流通の実態が具体的に解明されつつあります。
本展は、韓国国立海洋文化財研究所がこれまでに調査した高麗青磁など、その研究成果を日本で初めて紹介するものです。最新の水中考古学の調査によって発見された引き揚げ品を中心に、高麗青磁の歴史を概観しつつ、これまで知られていなかった新しい側面を明らかにします。
なお、これら海底遺物と関連のある当館所蔵の高麗青磁の名品も合わせて展示します。