画家・薄久保友司は、1942年に宇都宮市に生まれ、1971年、武蔵野美術学園を修了しました。1968年、新制作協会展に初めて出品し、以降、1974年、77年、83年の同展において新作家賞を受賞、1992年からは会員として新制作協会展への出品を続けながら、今日まで独自の画業を展開してきています。今回の展覧会では、1970年代から90年代の「土の賦ふ」シリーズを経て、深い黒の背景に緊張感あふれる線描を施した2014年の最新作まで、薄久保自身のセレクトによる油彩作品を中心にご紹介いたします。また、薄久保は、80年代半ばから絵本の挿絵を手がけるようになり、ストーリーも自作した3冊の絵本を含めて、さまざまな絵本、教科書(挿絵)、本(装丁)の仕事を世に送り出しています。黒の大画面と、こうした物語性の強い絵本の中の小さな世界は一見矛盾するようでもありますが、絵本の挿絵を制作する過程で培われた、こどもたちへのまなざしと小さいものへの愛情が、大画面の中の微細な描写に生かされていることはいうまでもありません。