人と人との間に広がる共通経験の領域は、「主客未分」あるいは「自他未分」と形容され、現象学的考察の対象になってきましたが、他者の占める時空間を自己が占めるということの現実的な矛盾はいまだに解明されていないように思われます。この共同研究においても、人間が自らを証し立てするときに問題となるこの自他の領域へと接近し、それをケアの論理にまで実効化してゆくことを目指しますが、その途上で水と陸との間に明滅する、ラカン的「リトラル」の次元に身をおきながら、芸術作品の身振りにその構造と機能とを探り、映像とインスタレーションによって思索します。
新宮一成