1930(昭和5)年、広島県豊田郡瀬戸田町(現・尾道市)に生まれた平山郁夫は、東京美術学校(現・東京藝術大学)に学んだのち、前田青邨に師事して日本美術院に出品を重ね、頭角を現しました。1959(昭和34)年から取り組まれた仏教をテーマとする制作、その後のシルクロードに取材した作品は、従来にない壮大なスケールの表現で、戦後の日本画を代表する画家の一人となり、1998(平成10)年には文化勲章を受章しています。
2004(平成16)年にユネスコの世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」を、平山は早くから日本文化の原点が宿るところとして注目し、取材を重ねて作品にしています。世界遺産への登録から10年を迎えた今、それらの作品を展観して当地域の価値、魅力を改めて見直すとともに、2009(平成21)年に亡くなった平山郁夫の芸術を<平山郁夫の生涯と仏教><平山郁夫とシルクロード><平山郁夫と熊野路>の三つの章によって振り返りたいと思います。