日本は、古くから海外の美術品を珍重し、特に室町時代には幕府を中心に、多くの中国の美術品を「唐物」として愛好し、その収集に努めました。それに対し村田珠光(しゅこう)は「侘び茶」を提唱し、煌びやかな曜変天目などより、侘びた灰被(はいかつぎ)天目が好まれるようになり、唐物の美意識も変化しました。さらに16世紀の「侘び茶」の大成に伴い、井戸茶碗などの韓国陶磁も珍重され、「唐物」の概念が広がりました。それらの背景には、16世紀から17世紀にかけての千利休、織田有楽、古田織部、小堀遠州、金森宗和などの茶人の台頭があり、まさに茶の湯における黄金時代と呼ぶにふさわしい時代となったのです。
今回の展示では、これらの茶人たちのたくまざる創意・工夫によって変化していく美意識と、「唐物」の概念の変貌をたどります。