大正ロマン・昭和ロマンとよばれる時代のノスタルジックな作風で多くの人々に愛されてきた画家・竹久夢二。特にその女性画は「夢二式美人」とも称され、一世を風靡しました。
水彩画・版画・油彩画まで多様な技法を手掛けるとともに、幅広く商業美術の分野でも活躍した夢二は、イラストレーター・グラフィックデザイナーの先駆者としても挙げられます。また「港屋」という夢二の企画・デザインした商品を直販できる店、いわばブランド・ショップをオープンさせたプロデューサーとしての一面も見せています。彼の手掛けた作品やその行動は、現代の私たちの目にも、いまだ色あせず斬新です。
晩年、夢二が生涯あこがれを抱き続けた欧米に旅行し、各地を放浪しながら土地の風景や人々の姿をスケッチに残したことはあまり知られていません。世界不況や体調不良のため失意の帰国となりましたが、残されたスケッチには、初めて訪れたあこがれの地に対する夢二の熱い思いが込められています。
本展では、夢二自身の肉筆画をはじめ、欧米でのスケッチ、オリジナルの港屋版画などを、浮世絵収集家としても名高い中右瑛氏のコレクションより厳選して展示し、これまで公開される機会の少なかった作品群が並びます。
古き良き時代のロマンの香りをお楽しみください。