鉛筆という誰でも一度は使ったことのある筆記具が画材として使用されたとき、そこにはある種の身近さと鉛筆の持つ潜在力の豊かさが浮かび上がってきます。本展覧会ではその鉛筆の魅力にとりつかれた木下晋と吉村芳生の作品をご紹介します。1日に14時間鉛筆を手に紙に向かう木下と1000枚を超える新聞という過去に今の自分の顔を描き込む吉村の、それぞれの「手作業」による「日々」の集積ともいえる鉛筆のチカラを感じていただけることでしょう。また、木下はモデルの人生そのものを描き写すかのような人物画を、吉村はひたすら自画像を描き続けています。モデルを描きながらも自身に深く対峙していく木下と、自らを描きながらあくまでも客観的に自身をとらえる吉村を対比させることから見えてくる、それぞれの作家の想いを紐解きます。