2015年の干支 (えと) は未 (ひつじ) です。「羊」は中国語では「陽」と同じ発音であることから、新春の賀詞「三陽開泰」に三頭の「羊」をモチーフにしたり、後漢時代の鏡には「吉祥」の「祥」を「羊」で表す銘文が遺されるなど、古代からおめでたい意味を持っていたことが知られます。同様に「魚」も「余」と音が通じることから、豊かさを象徴するモチーフとして表されます。
子孫繁栄・長寿・富貴をはじめ、人々は様々な願いをモチーフに込め、造形化してきました。羊や魚のほか、鳳凰、龍に代表される伝説上の生き物や、松竹梅、鶴亀といった馴染みの深いものまで、絵画の画題や工芸品の文様に見ることができます。それらは単独で用いられたり、複数組み合わせられることで重層的な意味の広がりが意図されることもあります。また、「願い」は「祈り」に通じます。泥池の中から美しい花を咲かせる「蓮」は、仏教美術の重要なモチーフですが、男女の愛情、結婚、豊かさのシンボルとしての吉祥的な意味合いも付与されています。モチーフに込められた意味は、時代や地域を越えた広がりを持ち、東洋美術を豊かに彩ります。
本展観では館蔵の絵画・工芸品の中から、縁起の良いモチーフが表現された、おめでたい美術作品を展示します。おめでたい年の初めに、幸せへの願いが生み出した美術の豊かな世界をお楽しみ下さい。 (担当 古川攝一)