藤田匠平の本展覧会のタイトルは「ニシキ」。錦のように緻密で豊かな色合いをもつ彼の陶器は、主に2つの技法から成り立っています。1つは、すりガラスのような手触りと、まるで水に落とした絵の具が広がって溶けていくような、やわらかな色合いのまだら模様が特徴の作品です。これは、何層にも重ねた釉薬を長時間かけて削るという、独特の技法によって作り出されています。蓋付きの小瓶など、作品は器としての機能を備えながら、どこか幻想的で抽象的な雰囲気をもちます。もう1つは、赤絵の点描で模様を描いた作品。まるで銅版画のような硬質の点描を施された、鳥やコイ、ヘビは、神秘的な趣きです。今回の展覧会では、この2つの手法による作品と、技法的にも新たに取り組む作品を展示予定です。