大名家の装いには、数多くの決まり事がありました。大名が身に付けた直衣や狩衣といった公家風の装束や、直垂・裃などの武家本来の装束は、官位や家格・儀礼によって、種類や色目が区別されました。また、女性の衣服にも身分や季節、年齢や未婚・既婚などによる細かな規定が設けられました。
しかし、装いは単に規式に則るだけではありません。特に公務を離れた普段着では、細かな取り決めがなかったため、好みに応じた色目や文様・裂地が用いられ、そこには当時の繊細な美意識がうかがえます。また、華美を極めた技巧や意匠が施された調度品や印籠・根付などの手回り品からも、時代を彩ったさまざまな「おしゃれ」をみることができます。
大名とその子女が身にまとった装束・衣服のほか、化粧に関する調度品や、印籠・根付、簪などの手回り品などから、大名家の華麗な装いと美意識を紹介いたします。