日本では、人と風景を描いた作品は、19世紀に入ってから数多く制作されるようになりました。特に、葛飾北斎の《富嶽三十六景》や、歌川広重の《東海道五十三次》といった浮世絵版画は、当時、大人気を博しています。これは、名所絵と呼ばれるもので、その独創的な構図、繊細な描写に加え、旅の思い出をしるした記念写真的要素も含んでいました。
現在の画家たちも同様にして、旅先を回想した作品や、風景に郷愁を重ねた作品等を数多く描いています。
今回は、イタリアで取材した髙山辰雄の《フィレンツェへ出る》、インドで取材した鈴木忠実の《霧を行く》や畠中光享の《林住禅定》、昔の別府湾に思いを馳せた池田栄廣の《船出前》等の作品を展示して、現代日本画家たちが、意欲的に取り組んだ“風景の中の人物たち”を描いた作品を紹介します。