このたび、華鴒大塚美術館の開館20周年記念として「―美しき万葉の花―椿絵名品展」を開催いたします。
椿は学名Camellia japonicaといい、その名が示すとおり日本原産の花木で、古くから山野に自生し、艶やかに照り輝く葉と花の連ね重なる気品ある姿は、昔も今も人々の心をとらえて離しません。とりわけ美術工芸の分野においては、椿の花の多彩さと美しさ、そして強い生命力は多くの表現者の感興を誘い、格好のモチーフとなって表されてきました。
本展では、優れた椿絵の収集で知られる「あいおいニッセイ同和損害保険株式会社」所蔵の作品の中から、江戸時代の尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一らと、横山大観、安田靫彦、小茂田青樹ら近代の画家をはじめ、堀文子、牧進、中島千波ら現代の第一線で活躍する作家たちの日本画作品、そして尾形乾山、北大路魯山人の工芸作品を一堂にご紹介いたします。
「椿は花だけではなく、葉の形が端的にしてきびしく、深緑の渋い色は実に捨てがたい味がある。自然のままに庭にあってよく、手折って一輪生けてながめても、その深い味は尽きない。」とは、金島桂華が椿の魅力について語った言葉ですが、日本人の心、美意識に語りかけてくれる花「椿」をめぐるさまざまな表現に画家の個性や特徴をご覧いただきながら、画中に咲き誇る椿とその清楚で華麗な美の世界を存分に味わっていただきたいと思います。