絵本の中で絵画は単に文章をなぞるだけではなく、材料の違いによるさまざまな効果や、色彩の組み立てによる印象の変化、写実やデフォルメによる演出などによって、豊かなイメージの世界を繰り広げてくれます。福音館書店の「こどものとも」シリーズは、それまで絵本の仕事に従事していなかった洋画家、日本画家、彫刻家、漫画家、イラストレーターなど、さまざまな分野の美術家が参加して、新しい絵本の歴史を築いてきました。これらの美術家たちは、絵画のさまざまな材料や技法を駆使して、絵画の持っている「伝える力」を私たちに示してきたのです。
宮城県美術館では1998年に「絵本原画の世界「こどものとも」の絵画表現1956-1997」を開催いたしましたが、これを機にその後177タイトルの絵本の原画、2800点余りの寄贈を受けました。このたびの「はじめての美術 絵本原画の世界」は、主にこれらの作品から30人の原画作者による50タイトルの絵本の原画321点を紹介するもので、大部分の作品は前回の展覧会では公開されなかった作品です。
この機会になつかしい絵本や思いがけない絵本の原画を楽しみながら、絵というものが本来持っている力についてもあらためて感じ取っていただければ幸いです。