「風景」の中の歌心
森本秀樹の絵画は以前にもまして色彩はやわらかな<響き>といったものを感じるようになった。
そして色数は抑えながらも相互の色彩は心地良く<ハーモニィ>を奏でている。彼の作品に<音楽性>を感じるのは私のみではあるまい。それら静謐は風景画の背後に声高でない彼の<歌心>というものが潜んでいる。
その<歌心>は何処へ。昨今の作品にもまま散見する「採石所」や「機関区」・「造船所」等々、単なる風景画ではない人々の永きにわたる営みや命を繋ぐ労働への視点、そしてそれが潰えて行くことへの愛惜の情が側々として心に染み入るかのようだ。更に風景の中へ、奥へ。
森本秀樹は日本人の営みの歴史と心を画布に探ろうとしている。 御子柴大三 (アートディレクター)