群馬県立近代美術館は, 群馬県明治百年記念事業の一環として県立公園「群馬の森」とともに建設がすすめられ, 1974(昭和49)年10月17日に開館しました。開館40周年記念展「1974」の第2部となる本展では, 当時の写真や資料, 磯崎新設計による当館の建築図面などにより当館が設立されるまでの経緯を振り返るとともに, 当館が開館した「1974」年に焦点をあて, この年の日本における様々な美術動向を紹介します。
1970年代に入って学生運動が下火になり, 「しらけ」世代の無関心が広がるなか, 1973年のオイルショックが物価の高騰をもたらし, 高度経済成長は終焉を迎えました。戦後日本社会が大きく転換したのが1974年です。
この頃, 美術においてはスーパーリアリズムと呼ばれる絵画が登場し, 版画においてもシルクスクリーンにより写真を取り込んだ表現が多用され, 写真や映像と美術との関係が盛んに議論されます。彫刻の分野では, 各地で野外彫刻展や彫刻シンポジウムが数多く開催されるようになり, 作品発表の場が飛躍的に広がっていきました。一方, 概念芸術や「もの派」を経て, 70年代初頭に活動を始めた若い世代の作家たちは, 表現行為を根源から問い直し, あるいは表現を受容する私たちの知覚や認知システムまでも題材にしました。70年代前半の美術に突出した動向は見られませんが, 次代に向けて表現や思想を育んだのがこの時代だったと言えるでしょう。
本展では, 1974年に制作・発表された多様な作品を一堂に集めることでこの時代の美術の特質を捉え, 戦後日本美術の転換点として「1974」年を浮かび上がらせます。