第二次大戦後、ポーランドでは、ポスターは特別な役割を果たしてきました。そしてまた、数多くの顔が描かれました。
戦後、新しい社会体制となったポーランドでは、ポスターは宣伝告知の役割のみならず、共産主義下の検閲や監視を潜りぬけて、政治や社会に対する不満、不安を暗に訴える手段となりました。また、ポーランドが背負った歴史や時代は、内と外、自己と他者の関係性を常に意識させ、これらは、アレゴリーやメタファーとして表現されています。
このような重要な働きをしたポーランドのポスターには、顔というモティーフが幾度も選ばれています。顔は「フェイス」とも「マスク」ともとれますが、この二面性に注目すると、ポスターに込められた意図や、当時のポーランドの社会状況を読み取ることができます。
また、その独特の絵画的表現は、人々が共有する記憶や、欲望、不満、そして歓びを「フェイス」「マスク」を介してグロテスクにもユーモラスにも描き出しました。これら比喩をともなう一見不可解な表現は、しかし、見るものとの対話を生み出すのです。
本展ではこうした観点から、ポーランドのポスターを、背景にある歴史や政治、社会などから読み解きます。そして、その特徴的な表現から、「相互作用」と「コミュニケーション」について考察し、ポスターというメディアがもつ機能を改めて考えます。