戦後のフランス絵画を切り拓いた男 日本初の回顧展
ジャン・フォートリエ(1898-1964)は20世紀フランスを代表する画家の一人です。第二次世界大戦の戦時下に描かれた「人質」連作の激しく歪んだなかば抽象的な人物像は、人類の暴力を告発する20世紀絵画の証言者として位置づけられています。そこでの絵具の素材感もあらわな独自の表現方法は、絵画の役割を外界の描写から解放し、画家の行為の場へと、そして絵具という物質とイメージとが混交し詩情を醸し出す場へと転じました。この転換は同時代の抽象絵画の運動とも呼応し、フォートリエはヨーロッパにおける「アンフォルメル」の先駆けと評されることになります。そうしたフォートリエの作品は、1959年の作家の来日をハイライトに20世紀後半の日本の美術界にも多大な影響を与えました。
本展は、日本でははじめてとなる画家没後の回顧展として、彫刻や版画なども含めた約90点でフォートリエの魅力を余すとことなく紹介するものです。20世紀美術に偉大な足跡を残した画家の全体像をとおして、時代の証言に耳を傾けていただけますと幸いです。