静岡県浜松市に生まれた清川泰次(1919-2000)は、戦後、本格的に絵を描き始めるようになり、抽象表現主義が台頭してきたアメリカへ1951年から3年間、そして再び1963年から3年間にわたって滞在し、絵の制作に励みました。そして制作の根拠を、人物や風景といった具体的な事物である「もの」からではない、自由な表現を求め、生涯にわたり作品を制作し続けました。「もの」からできるだけ距離を置くことを意識した清川泰次にとって、絵画を成立させるために「色」は、とても重要なテーマであったといえるでしょう。
「色」がまだ「もの」を形成するための一要素をして役割を担っていた初期の作品。そして「色」そのものが絵画の主役となった1960年代の油彩作品は、一見、一色に見えるような画面のなかにも、微妙な色やマチエールの工夫をみることができます。そして、晩年の作品からは、アクリル絵具の明快な色と色の響き合いを感じることができるでしょう。
本展では、清川泰次の作品から「色」に注目し、初期作品から晩年までの作品、約15点をご紹介します。
小展示室では、清川泰次が1954年頃、ヨーロッパを旅行した時に撮影した、当時としてはまだ珍しかったカラー写真も併せてご紹介します。