チャールズ&レイ・イームズ、アレキサンダー・ジラードらの才能をいち早く見出し、戦後のモダンなライフスタイルにおいて、新しい家具の考え方、軽快なオフィスのあり方を提唱したジョージ・ネルソン(1908-1986)は、20世紀デザインを定義づけたデザイナーの一人といっても過言ではありません。アメリカのコネチカット州ハートフォードで生まれ、エール大学で建築の学位を取得、ローマのアメリカン・アカデミーで学んだ後、ニューヨークで建築事務所を設立します。いくつもの建築雑誌の編集に関わるなどライター、編集者としての資質も磨き、後に建築やデザインの本質を語る多くの著作を発表しました。
壁の厚みに注目して考案した画期的な収納家具、《ストレージウォール》(1945)が『LIFE』誌に大きく紹介されたことがきっかけとなり、1946年からはハーマンミラー社のデザインディレクターに就任(~25年間)、システムによるデザインやCI(コーポレートアイデンティティ)を次々に提案し、イームズやジラードらとのコラボレーションにより同社を一躍世界的な家具メーカーへと成長させました。ネルソンは、卓越したデザイナーであったばかりではなく、優れたプロデューサーであり、常に先を見つめ、人、社会、流通をトータルで考え続けました。ネルソンの“モノを視る方法論”は教育者としても歓迎され、大学での伝説的な講義を生み出します。こうしたネルソンの生き方や考え方は、今この時代に新鮮に映ります。
本展は、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの企画による世界巡回展で、日本では目黒区美術館のみでの開催となります。これまで、纏まった形で紹介されることのなかったジョージ・ネルソンとネルソン事務所による豊かな仕事とその魅力を、家具やプロダクト、模型や映像、そしてグラフィック資料など約300点でご紹介していきます。