タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、2014年6月7日(土)から7月5日(土)まで、細江英公個展「鎌鼬」を開催いたします。本展では、細江の代表作として高い評価を得る「鎌鼬」のシリーズより未発表作品を含む28点の作品を展示予定です。
“鎌鼬”とは小さなつむじ風の中心部が真空状態になり、そこに触れた皮膚に突然鎌で切られたような傷ができる現象を指し、両腕に鋭い鎌を持ったイタチに似た妖怪として伝えられています。舞踏家 土方巽を被写体とした「鎌鼬」は1965年より撮影を始め、土方の故郷である秋田に加え、東京の柴又、巣鴨など、戦後の細江の軌跡を沿うような場所にまでも撮影地を拡張し、1969年に写真集として刊行されました。撮影は、自らの原型を故郷に見出そうとしていた土方に鎌鼬のイメージを重ね、また細江自身が忘れかけていた山形における疎開時の体験を、「東京での生活の戦後の体験と疎開の体験、そして焼け跡、今の経済繁栄、そして、この平和、このままどこへ行ってしまうのだろう」(「細江英公に聞く」、『季刊写真映像』1号、1969年)という思いのなかで確認しようとする行為でもありました。東北の血と風土を共有する土方の肉体を媒体として「私の『記憶』を『記録』する」(細江英公「鎌鼬」、『写真・細江英公の世界』、写真・細江英公の世界展実行委員会、1988年)、被写体との関係性から紡ぎ出された物語性の強い作品となっています。