遅い人生にかけがえのない邂逅をえた。しかもその時は家人の闘病の最後の時へ近づいていて、しかも初めての展覧会の日々はインフルエンザによる外出禁止令が出たりした。でも伊津野雄二の作品、言葉、その存在は深く魂に刻印され、巡礼者としての旅をともにすることとなった。
風土によって培 (つちか) われた魂を鑿 (のみ) で造形する。手が施すのを待っている木との交感。槌音が木霊 (こだま) し、木は光を抱き、風が晒し、花々が香りを添える。削ぎ落された純粋で美しいフォルムが深層時間にゆたかにたくわえられた希望を清冽に伝える。しかし耳を澄ませば、微かな異音が予兆を伝える。三叉路にいるのだと。 島田 誠