ベン・シャーン(Ben Shahn、1898~1969)は、当時は帝政ロシア、現在はリトアニア共和国のカウナスに生まれ、幼くしてアメリカに移住し、そこで活躍した画家です。本展でご紹介するのは、彼が死の前年に制作した当館所蔵の石版画集、《ライナー・マリア・リルケ『マルテ・ローリッズ・ブリッゲの手記』より「一行の詩のためには…」》です。彼は、ドイツの詩人リルケ(Rainer Maria Rilke、1875~1926)の唯一の長編小説『マルテの手記』に着想を得てこの石版画集を制作し、「詩は感情でなく経験である」というリルケの言葉に深い共感を寄せていたと言います。社会とそこに生きる人間に常にまなざしを向け続けたベン・シャーンならではの作品世界をご鑑賞下さい。