私たちは絵画などの美術作品を、四角い額縁に入った状態で、美術館の展示室で鑑賞し、この状態を当然のことのように受け入れています。しかしこうしたものの中には、元は建物の中に取り込まれていたり、ある一定の環境下にあることを前提としていたり、もしくは生活の中に密着した日用品だったものもあります。では、元の場所から現在では切り離されているこうした作品を、その元の場所に、元の状態にできるだけ返してみたらどうでしょうか。
名画があった場所に立ち返ってみたならば、何が見えるでしょうか。例えば、美術作品とそれが置かれる場所の関係とは何なのか、そして美術館という場所とは何なのかという疑問など、これまで気づかなかった事が見えるかもしれません。
当館のコレクションを中心とした約60点により、室内の装飾に用いられた掛軸や屏風、壁画、身近なところで以前は用途を有していた工芸品などを、元の状態をできるだけ再現、もしくはそれが分かるように解説・展示します。
特にこの度は、かつてベルギーのペリエ邸内の壁画の一部であったポール・デルヴォーの作品を、当館とヤマザキマザック美術館の所蔵品で展示します。一度は離れ離れになった姉妹の作品が、海を超えて再会するという貴重な機会となります。