植物をルーペで詳細に観察し、その内部構造を精緻に再現した陶の花々。銀彩が施され1つ1つ丁寧に作られたひまわりの種、めしべ、おしべ、花弁、花びら。見る者は、陶による細密表現に感嘆すると同時に、自然への憧憬と畏怖を感じずにはいられない。これらの作品は、2000年頃から美術作家・杉浦康益が手掛けている<陶の博物誌>シリーズです。
1949年東京に生まれた杉浦康益は、東京藝術大学在学中「やきものは石である」という恩師の言葉に触発され、《陶の石》を造り始めました。1984年のびわこ現代彫刻展への出品を機に、石から岩へとモチーフをスケールアップさせ、<陶の岩>シリーズを展開し、やきものの新たな可能性を追求。その後1994年からは、<陶の木立>シリーズを発表し、大規模なインスタレーションに取り組み、2006年「越後妻有アートトリエンナーレ」、2013年「瀬戸内国際芸術祭」などにおいて、陶と自然との融合を試みています。
本展覧会は、西宮市大谷記念美術館が所蔵する<陶の博物誌>シリーズの作品27点を中心に、<陶の岩>、<陶の木立>のシリーズも展示し、杉浦康益の代表的な仕事を紹介します。