20世紀を代表する画家、ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。ギリシャで生まれ、パリでの活動の後にローマへ移住したこの画家は、古代の建築物や彫像、機関車などのモチーフを配した、謎めいた作品で知られています。彼の生み出した「形而上絵画」とは、目に見える日常の裏側に潜む、精神世界を画面に出現させようとしたもので、シュルレアリストたちに大きな影響を与えました。第一次世界大戦後の古典主義への回帰を経て、晩年には、新たな形而上絵画を創造するなど発展を続けたデ・キリコの作品は、現実と非現実の境を行き来し、観る者の不安や困惑を誘う一方で、その芸術に隠された大きな謎のゆえに、私たちを惹きつけてやみません。
本展は、パリ市立近代美術館に寄贈された未亡人イザベラ・デ・キリコの旧蔵品を中心に、ヨーロッパ各国のほか、日本国内に所蔵されている作品から、画家の各時代の代表作、約110点を展示し、その画業をご紹介するものです。ぜひこの機会に、独創的で神秘に満ちたデ・キリコの作品世界の魅力に触れてください。