東京都写真美術館では佐藤時啓の個展「光―呼吸 そこにいる、そこにいない」を開催します。
光・時間・空間・身体といったキーワードをテーマとして、写真装置による制作を続けている佐藤時啓は、光が小さな穴を通じて像を結ぶという基本的な原理への興味や驚きを出発点に、ピンホール・カメラやカメラ・オブスクラ、長時間露光を用いた制作を展開しています。
代表作のひとつである<光―呼吸>シリーズでは、森や海、都市など、カメラの前に広がる風景の中を佐藤自身が、発光するペンライトや太陽光を反射させた鏡を持って歩き回り、その移動の軌跡をフィルムに定着させていきます。結果として捉えられた光のイメージは現実世界では不可視のものであり、写真ゆえに見ることを可能にするという事実を明らかにします。また、建築物やバスなどの乗り物をカメラ装置として改造し、そこにうつし出された変化するイメージを街の人々と共に体験するパフォーマンスも手がけるほか、ユニークな構造を持たせたピンホール・カメラも自ら制作しています。本展では、佐藤のさまざまな試みによってもたらされたプリント作品を一挙に展示。自己のテーマを作品化するために取り組んできた作家の探求を<光―呼吸><Gleaning Lights><Wandering Camera>などのシリーズから新プリントで紹介します。