建築家・中村好文は、長年にわたってクライアントの暮らしに寄り添った普段着のように居心地のいい住宅をつくってきました。この展覧会は中村が子供のころから心奪われ、同時に「住宅の原型」として位置づけてきた「小屋」に関する考察と展示を通じて「住宅とはなにか?」を問い直す企画です。会場は「長期インスタレーションルーム」と「光庭」ですが、光庭には、エネルギー自給自足を目指すひとり暮らし用の小屋「Hanem Hut」を原寸サイズで展示いたします。
3.11以降、エネルギー問題や環境汚染の問題は、ますます避けて通ることのできない重要なテーマとなってきています。この小屋の展覧会が、そうした問題解決への糸口となり、提案となることを願ってやみません。
32歳で独立してから30数年間、おもに住宅設計と家具デザインの仕事をしてきました。もともと建築家としての私の最大の関心事は「人の暮らし」と「人の住まい」でしたから、身の丈を越えた大仕事を抱えて右往左往することなく、心おきなく住宅の仕事に専念することができたのは幸いでした。そして、私の「人の暮らし」と「人の住まい」への関心は「住宅ってなんだろう?」を考えることでもありました。ある時期からは住宅の原型が小屋にあるような気がしはじめて、有名無名を問わず、古今東西の小屋を世界各地に訪ね歩いてきました。
「小屋においでよ!」と題したこの展覧会は、そんな小屋好きの建築家が敬愛を込めて「小屋」に捧げるオマージュです。この展覧会が来場者のひとりひとりにとって「住宅とはなにか?」を考えるきっかけになってくれたら望外の喜びです。
中村好文