世界を旅して描き、情緒豊かな水彩画や油彩画を描きつづけた吉田夫妻の作品を紹介する展覧会です。
福岡に生まれた吉田博(1876~1950)は、上京して画塾不同舎に学び、日本の古き良き風景を豊かな色彩と繊細な筆づかいで水彩画に描きました。3年に渡る欧米旅行から帰国すると、太平洋画会の創立に参加して旧派のリーダーとして活躍する一方、日本各地の山を歩き、壮大な風景を前にした感動を大作に描きました。50歳を過ぎてからは木版画に取り組み、世界各国や日本各地で取材した風景を叙情あふれる色づかいで表現し、国内だけでなく海外でも高く評価されました。
吉田博の義妹で後に妻となったふじを(1887~1987)は、幼い頃より博から画家として厳しい指導を受けました。16歳で博とともにアメリカに渡り、全米各地で開いた展覧会は評判となりました。その後訪れたヨーロッパで多くの名画に触れ、若くして貴重な経験を積みました。3年後に帰国すると太平洋画会や文展で活躍し、その後も人生の苦難を乗り越えて静物画などに優れた表現を見せ、60歳を過ぎてから花をモチーフにした抽象作品にも取り組みました。
本展は、美術館では初となる吉田博・吉田ふじをの二人展です。若い頃から共に西洋絵画の確かな技術を身につけ、それぞれの世界を展開させていった日本の洋画史でも類まれな二人の画家の歩みをご覧いただきます。