企画展を開催する際には、担当学芸員がまず展示のストーリーを考え、展示する資料の国・時代・ジャンルを選定したうえで、一つの展覧会に仕上げていきます。その際、当館が所蔵する約1万件の資料の中から、国指定文化財(国宝・重要文化財)に代表されるように、出来るだけ「良いモノ」を見ていただきたいというのが、学芸員の偽らざる気持ちです。
その陰で、調査が進まずに一度も展示したことがないもの、関連資料があまりなく展示しにくいもの、過去に展示したものの世間に認知されていないものなども多数存在しています。しかし近年の調査・研究活動で、これらの中にも著名な資料に負けない名品が多くあることがわかってきました。
本展は、このような知られざる名品にスポットを当てる初めての試みです。書跡は、初公開となる地元岡山の戦国武将である宇喜多直家自筆書状や、江戸時代から明治初期まで岡山藩学校に飾られていた佐々木志津摩筆の扁額の本紙、絵画は江戸時代初期に描かれた華やかな「秦漢物語図屏風」をはじめ、徳川綱吉や吉宗といった将軍や歴代岡山藩主自筆のもの、近世の狩野派、そして文人画などをとりあげます。さらに昨年、映画「利休にたずねよ」で千利休の美意識をあらわす重要な小道具のモデルとして使用された「月浪千鳥蒔絵料紙箱」や、テレビ東京系「美の巨人たち」で取り上げられた逸見東洋の「風神雷神図堆朱盆」など、話題の工芸品もあわせて展示します。当館の知られざる名品をお楽しみください。